奈良日帰り旅*念願の志賀直哉旧居へ

十数年?数十年!前にこの辺りを歩いている時に、
たまたま案内看板を見て、いつか訪れてみたいと感じていた志賀直哉旧居へ・・・。

夫も実は、昔このお隣のカフェ"たかばたけ茶論"(サロン)をよく利用していたようで、
一度訪れてみたかったらしく、めずらしく?意見が一致しました。
類を見ない長い記事になってしまったので、昭和初期の建築物や昭和レトロ、
志賀直哉のことに関心ある方は、時間がある時によければご覧ください。

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福知院から途中のなだらか登り坂には、新しく出来たカフェや、
この奈良の高畑(たかばたけ)の地を好んで移り住まれた文豪や画家といった、
今で云うアーティストの住まいがあり、奈良にはめずらしいモダンな雰囲気を、
当時の姿そのままに感じさせてくれています。

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この志賀直哉邸は、昭和3年に、白樺派の文豪志賀直哉(しがなおや)が
自ら住みやすく設計したもので、数寄屋の造り(茶屋風の建物)で有名な京都の大工さんに建築させ、
翌年4月奈良市幸町の住まいから移り、9年間住んだ旧居(敷地435坪 建物134坪)だそう・・・。

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知り合いのお宅へ訪問するように、門を入り玄関を上がり(靴を袋に入れて)
ようやく受付(実は書斎の隣の本の保存庫納屋だったところのよう)へ・・・。

入館:AM9:30-PM5:30(入館は5:00まで)(3月-11月)
    AM9:30-PM4:30(入館は4:00まで)(12月-2月)
定休日:月曜(貸切になります)入館料:高校生以上350円.中学生200円.小学生100円

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志賀直哉の住まいから代々何人もの居住者に代わり(米軍の接収や空き家や厚生省厚生年金宿泊所となっていたことも)、
取り壊しも考えられていたそうなのですが、
昭和53年厚生省から「旧志賀直哉邸 」を学校法人奈良学園が、譲り受けられ(買い取られ)ました。
平成12年には登録有形文化財(第29-34~36号)となり、
現在「志賀直哉旧居」として当時の写真を基に復元し、保存しながら一般の方へも公開したり、
奈良文化女子短期大学のセミナーハウスとして使われているのだそうです。

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親切な受付の方に一言訊ねるだけで、快くたくさん説明してくださいましたが、
時間が閉館まで1時間で・・・、受付の方に言われたようにはじめに2階から見学させていただきました。
2階の客間の窓からは、若草山に春日山(御蓋山)までも見渡せる
緑豊かなすばらしい景色が広がり、ここに泊まられた?小林多喜二らも見られた可能性も・・・。

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またこの部屋の床の前に飾られていた仏像は、その入手を谷崎潤一郎と争ったものにもかかわらず、
仏像は谷崎の手に渡り、その購入予定金でこの家を建てたそう・・・。
仏像は後に直哉の元にもどって来たそうですが、現在は行方知れずになっているのだそうです。
またお隣の書斎(写真なし.1階にもあり)では、志賀直哉の代表作小説『暗夜行路』を書き上げたとされているとか・・・。




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1階へ戻り洗面所や、現代では珍しい角型の五右衛門風呂(使用可能!)を見たり・・・。
台所や女中部屋や食堂にサンルームと・・・、予想していた昭和はじめの建築にしては、
日本の建築様式に洋風な要素が溶け込み、サンルームは特にその時代で云うハイカラな場所であったよう・・・。

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大きく明るいガラス張りの天窓に、床は特注の瓦(磚)、部屋の隅には実用と装飾を兼ねた手洗い、
食堂からサンルームへの出窓とカウンターも、当時としてはめずらしかったと思えます。
そして何よりこの部屋に多くの文人画家が集い、芸術を語り人生を論じたり、
麻雀・囲碁・トランプ等の娯楽に興じ・・・、そのような集いが
人間的な交際の場や文化活動の核となり「高畑サロン」と呼ばれるようになったのだとか。

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サンルームの隣の夫人のお部屋は、邸宅ご案内によると
「南側で日当たりが良く台所・食堂と子供の部屋との中間に位置し、
健康的であると共に能率的な場所にあることや、床板の下は竹が入れられ、
床柱は美しい赤松、棚の天井は葦張りで、女性向きの優しげな数奇屋風の部屋にしたり、
広縁の一部は畳張りとなっており、母が子供へ干渉し過ぎないよう、
子供部屋の広縁とは壁でふさがれ行き来できない造りになっています。」と説明が・・・。

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また「子供勉強部屋も夫人の部屋と同じく南側の庭に面したところにあります。
床にはコルクを敷き、壁には腰板を張った、子供の活動に配慮した造りです。
机、椅子を入れて、子供たちはこの部屋で勉強しました。

サンルームと離れた場所に配置することにより子供たち、来客の双方が気兼ねなく振る舞える点、
夫人の部屋の広縁との境界を塞ぐ事により子供の独立心を養おうとした点など、
直哉の子らへ対する細やかな配慮と愛情が窺えます。」・・・と。

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今では学習能力を高める為に、母親の見守るリビングで学習するお子さんが多い中、
時代によって子どもに対する教育の違いは大きいなとも思えたり・・・。
多くの文豪や画家たちが集まるだけの、人を分け隔てず高潔である志賀直哉の人間性も感じられます・・・。

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また子供たちの寝室は、「湿気を防ぐために押入れの床を一段高くしています。
窓は外側が桟がはめ込みになったガラス障子、中間を板戸、内側を障子にし、
風雨や防寒に配慮した造りです。直哉の居間は中庭に面した明るい部屋です。
子供たちの寝室とはふすまを隔てて続きになっていますが、
子供たちは勉強部屋と直哉の居間との間にある踏込から出入りしていました。
踏込の壁の下部には柵がついた窓を設け、風を通すとともに親の優しい心を通わせました。」と、
志賀直哉の設計能力以上に、写真を通しても、妻や子どもその家族への愛情は強かったことがよく分かりました。

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また家族や白樺派の文化人だけではなく、奈良に住まう者(13年間だけでも)としても・・・。
随筆「奈良」(志賀直哉全集7巻)の最後に
「兎に角、奈良は美しい所だ。自然が美しく、残っている建築も美しい。
そして二つが互いに溶けあってゐる点は他に比を見ないと云って差支えない。
今の奈良は昔の都の一部分に過ぎないが、名畫(名画)の殘欠(残欠)が美しいやうに美しい。
御蓋山(みかさやま.春日山)の紅葉は霜の降りやうで毎年同じやうには行かないが、
よく紅葉した年は非常に美しい。 5月の藤。
それから夏の雨後春日山の樹々の間から湧く雲。
これらはいつ迄も、奈良を憶う種となるだろう。」・・・と書かれてあるそうです。

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そして一番最後に屋内で見学したのは、
多くの執筆をされたであろう夏の書斎と、来客と気軽に話をしたり将棋をさしたりする部屋にするつもりが、
結局夫人と子供たちのお茶のお稽古(師匠は興福寺のお坊さん!)に使われた茶室です。
建築を請け負った下島松之助が、実は裏千家関係の数奇屋大工だったために、
精魂込めて造られていることもよく分かり、天井の低さに驚きました。

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受付の方が案内されたとおり、最後は靴を履き土間を出て、中門を通り裏庭へ・・・。

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さわやかなグリーンの芝生や、アジサイや桔梗やずっとここで成長してきた樹々の緑が、
モダンな造りの建物を引き立て、この時期ならではの庭の美しさを見せてくれました。
またかえでの木等もあり、季節折々の自然を楽しむことができそう・・・。

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この庭をいつも見ながら、多くの文化人や家族過ごしていた日常は、
かけがえのない充実した幸せのひとときだったのではないでしょうか・・・。

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裏庭には倉庫や今も涸れていない?井戸や、洗い場と思っていたら・・・
直哉が子供たちのために作った小さなプールも!ありました。
直哉は大正3年に結婚して昭和7年までの間に2男7女をもうけますが、
うち2人が幼くしてお亡くなりになり、この旧居では五女と六女が生まれたそうです。

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その後、池周りのお庭も拝見し、別の中門から出て表門へ・・・。

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ちょうど門は閉まり閉館の時間になってしまっていました。
こちらに限らず奈良町界隈は飲食店を除いて、閉館や閉店時間が早い(5時や6時が多い)ので、
どうぞご旅行で来られる際にはご注意ください。この時も「もうおしまいみたい・・・。」と残念そうな観光客の方も・・・。

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予想以上に広くて広くて・・・、想像以上に志賀直哉のことや昭和の建築物に圧倒された志賀直哉旧居・・・。
この歳になって訪ねたからこそ、その風情や良さが感じられた気がしました。

最後まで長い長い記事をご覧いただき、本当にありがとうございました。
もう少し奈良日帰り旅は続きますので、よければ時々でも覗いて下さい。

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by tukimi-kai | 2011-07-30 22:31 | 奈良 | Trackback | Comments(2)
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Commented by kotonote at 2011-07-31 16:00
志賀直哉邸は、数年前に東京からの友人と行ったことがあります。
立派なお宅でした。
サロンとして使われていたダイニングも素敵でしたが、
キミさんが書いていらっしゃるように、お子さんのお部屋とか
家族を大切にされていたことがよく伝わるお宅でした。
Commented by tukimi-kai at 2011-07-31 20:40
琴さんも行かれたことがあったのですね~。
外から見た感じでは、そんなに大きなお宅のイメージは
なかったのですが・・・、1階はあまりに広くて、驚きました。
家族の為に、細部にもこだわって設計されていたことが、
ホームページで見たり、展示されてある写真からも伝わってきました。
ここまでできるなんて・・・、やはり才能のある方なんですね。


大好きな旅のように、      自分の人生=日々の暮らしをも楽しみたいです。


by tukimi-kai

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